写真と綱引き

わたしは愛の人間だ。朝起きて窓を開けた時に感じる風、パンを焼いたときの香り、友だちから借りたCD。電車の中で話している人たち、アイドル。世の中は素敵なものがたくさんあって愛しい。やさしい。 だから、自分は恋愛的にも、愛し愛されることが得意だと…

たぬきち商店

生まれてこの方、売られた喧嘩にははじめから白旗あげている。わたしのフィールドではないから比べないし、批判もしない。最終的になりたい自分に近づければそれで満点です。 他人を妬ましく思ったことがない。怒ってもぶつけようと思ったこともない。育って…

日々の泡

自転車で市民プールに駆け出して、水の中で仰向けになるのが好きだった。鼻から漏れる水泡が太陽に反射してキラキラ上昇する。周りの話し声も聞こえない。息ができないことも忘れるくらいずっと上を見ていた。地上よりずっとずっと美しかった。 人魚姫が陸で…

客寄せパンダ

人生初の動物園は付き合ってもいない男の子とのデートだった。本当はムンク展に行こうと待ち合わせしたのだけれど、最終日だから空いているはずもなく、向かいにあるシャンシャンに望みを託した。果たしてこれはデートなのかな。何度かご飯に行ったりスカイ…

黄金色のステッチ

けれどもそれは何のためなの?どうせ生理がきたら汚れちゃうじゃん。洗濯したらボロボロになるし。コスパ悪くない?あたしは今日UNIQLOだよ〜!左の眉毛をクエスチョンマークのように、くいっと上げて彼女は言った。わたしの発言ひとつで変わる表情は、純粋…

ラブリーに生きる

わたしたちは常に今が最高じゃん。 一生懸命に勉強を頑張っている学生さんも、手を抜いて友だちとタピオカ食べているあの子も、泣きながら通勤しているあなたも、キラキラ笑顔で笑う君も。 承認欲求がなんだってんだよ〜褒められたいし 褒めたいよ。だって本…

波の形

わたしの声は、ちいさくて高い。大きな声を出そうと思うとふるえて少しみっともない。お店やさんで注文するときは1回では通らないから、友達や家族がオーダーしてくれる。でも電話口で「優しい声ですね」と褒められることもあるし、大きい音が苦手だから別…

旗を振る

大学3年の夏、現職のインターンに参加した。意識が高かったわけではない。ゼミの教授が「楽したいひとは早めに行動しときなさい。」と言ったから、面倒くさがりのわたしはその通りに行動しただけだった。30人の応募者の中から、1人選ばれて、メーカーで2週…

タイ!

わたしたちの旅行は大体、半年くらい前に「どっか行こう〜」で始まる。そしてしばしの休息。ギリギリの時期に焦って「どこ行こう、島!」の連絡を取り合ってからはお手の物、行き先はタイ。夏に川で遊んだので、次は海と決めていた。 わたしたちの出会いは小…

塩素

毎晩あなたが健やかに生きられますようにと目を閉じる。守らなければいけない倫理観、周囲の視線、自分の理想。何もかも捨てて旅に出てしまおうか、なんて思いつつ 毎日同じ時間に起きて、同じ電車に乗って働いているのは、この街で生きるため。 東京で一人…

コップの水滴

すごく苦手なのに、嫌いになりきれないのはどこかで期待しているから。好きになりたいから。 中学2年生のとき、突然学年で一番不良の男の子からメールが来た。うちのクラスの少し皆から嫌われている女の子の彼氏だった。あいつと仲良くしてほしい、みたいな…

鍵盤のうえでスキップ

周りがどんどん付き合っていって、なんなら結婚して、子供までいるという現実。そうよね、もう23だもの。かく言うわたしは、「愛とは?恋とは?」という、皆さんがティーンの頃に悩んでいただろう命題をひたすら解こうともがいている。 わたしの考える愛は、…

助けたい、包みたい

頭のなかではまっすぐズンズン歩いていって、その勢いで抱きしめているのに、実際のわたしの身体は何でもないふりをしてあなたの隣に並んで、他愛のないはなしをしていたりする。 触れる、という行為は、言葉が役に立たない場面での一種の祈り。大切だよ、と…

寝ても覚めても 感想

ぼやぼやと生きてきて、何か正しいことがしたいけれど、何をしたら良いか分からないし能力もない。ただそこにある真実をそのまま受け入れる能力に長けている朝ちゃん。起こること全部をストンと受容できちゃうから、現実はつまらなくて、仕事も友だちもあれ…

わたしのたましい 百まで

坂元裕二さん脚本のドラマ『問題のあるレストラン』のセリフ。 “幼稚園の時にセーラームーンというアニメがありました。園庭でよくそのごっこをしてたんですけどみんなはだいたいセーラームーンとか、セーラーマーキュリーを選んで私はいつも最後まで残った…

秋の音は濁点

葉と空気が触れる音がして、空を見上げたら、風が思いのほか冷たくて、鼻が痛くなった。緑と赤と黄色と茶色の葉が揺らめいていて、美しかった。 最近、そこにあるものをあるようにしか受け取らないようになった。『西の魔女が死んだ』のマイのように、相手の…

ほんと

本当は、一途 本当は、不真面目 本当は、他人に優しい 本当は、自分が嫌いじゃない 本当は、意志が強い 本当は、ほんとうは、ほんとは 言えない、言わないまま 誤解されたまま そして わたしも誰かを理解できないまま 日々は回っていくの

言葉の記録

“ふりむくのは、挑戦だ。自分の愛ではなく他人の愛を信じるのは、自分への裏切りではなく、挑戦だ。(勝手にふるえてろ/綿矢りさ)” “瞬間の集積が時間であり、時間の集積が人生であるならば、私はやっぱり瞬間を信じたい。 (泳ぐのに、安全でも適切でもありま…

自分との距離

誰かといるときだけ、人の形を保てている気がする。一緒にいる人の社交性を吸いとって人間に擬態するさながら宇宙人だ。樹木希林さんがNHKの密着取材で、「たまたま女優という道があっただけで、たくさんの男を騙して保険金をだまし取って殺す女に成りかねな…

言葉と自意識について

電子書籍はどうも肌に合わない。無料お試ししていたkindle unlimitedを一日で解約してしまった。短い時間の中で、和辻哲郎の言葉と出会う。『自己の肯定と否定と』。 “自分が人を欲する時には人を征服して自分に隷属せしめる。自分の愛は、常に、自分を完成…

金曜日は妖怪についての講義がある。そのひとコマのために、友人に会いに大学へ行く。授業終わりには、お酒を飲みに行ったり、ご飯を食べに行くことが多いけど、この日はスイーツを食べることに。わたしが吉祥寺へ行く予定が入っていたので、表参道ではなく…