客寄せパンダ

人生初の動物園は付き合ってもいない男の子とのデートだった。本当はムンク展に行こうと待ち合わせしたのだけれど、最終日だから空いているはずもなく、向かいにあるシャンシャンに望みを託した。果たしてこれはデートなのかな。何度かご飯に行ったりスカイツリーに登ったりした。彼は必ずうちまで送ってくれるし、お会計の時に「格好つけさせてよ」と言い払ってくれるのだけれど、はっきり言葉にしてくれた方が格好がいい。少なくともわたしには。  

 

はじめから友だちになろうとか、これは恋愛として仲良くなれるかのお試しですとか、身体しか見てませんとか、事前に分かればいいのに。言ってくれればすぐに好きになったり、嫌いになったりできるのに。

 

「男の子とふたりで遊ぶよ」って言うと女子も男子も口を揃えて「デートじゃん」って言うけれど、わたしには分からない。なにも分からないから急にヤレるとか思われてしまうのかもしれない。そうか、自己決定権の問題か。何を考えているか分からないところが好き、だから振り回されたいと言われたことがある。そうか、あなたたちも何も分からないのか。一緒じゃん。  

 

結局その日はシャンシャンは見れなくてずっと鳥のコーナーの前のベンチに座って珈琲を飲んでいた。彼は気を利かせてゴミを捨てに行ってくれた。その間ずっと名前の知らない鳥が籠の中で飛ぶのを見ていた。

 

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