2019-01-01から1年間の記事一覧

写真と綱引き

わたしは愛の人間だ。朝起きて窓を開けた時に感じる風、パンを焼いたときの香り、友だちから借りたCD。電車の中で話している人たち、アイドル。世の中は素敵なものがたくさんあって愛しい。やさしい。 だから、自分は恋愛的にも、愛し愛されることが得意だと…

たぬきち商店

生まれてこの方、売られた喧嘩にははじめから白旗あげている。わたしのフィールドではないから比べないし、批判もしない。最終的になりたい自分に近づければそれで満点です。 他人を妬ましく思ったことがない。怒ってもぶつけようと思ったこともない。育って…

日々の泡

自転車で市民プールに駆け出して、水の中で仰向けになるのが好きだった。鼻から漏れる水泡が太陽に反射してキラキラ上昇する。周りの話し声も聞こえない。息ができないことも忘れるくらいずっと上を見ていた。地上よりずっとずっと美しかった。 人魚姫が陸で…

客寄せパンダ

人生初の動物園は付き合ってもいない男の子とのデートだった。本当はムンク展に行こうと待ち合わせしたのだけれど、最終日だから空いているはずもなく、向かいにあるシャンシャンに望みを託した。果たしてこれはデートなのかな。何度かご飯に行ったりスカイ…

黄金色のステッチ

けれどもそれは何のためなの?どうせ生理がきたら汚れちゃうじゃん。洗濯したらボロボロになるし。コスパ悪くない?あたしは今日UNIQLOだよ〜!左の眉毛をクエスチョンマークのように、くいっと上げて彼女は言った。わたしの発言ひとつで変わる表情は、純粋…

ラブリーに生きる

わたしたちは常に今が最高じゃん。 一生懸命に勉強を頑張っている学生さんも、手を抜いて友だちとタピオカ食べているあの子も、泣きながら通勤しているあなたも、キラキラ笑顔で笑う君も。 承認欲求がなんだってんだよ〜褒められたいし 褒めたいよ。だって本…

波の形

わたしの声は、ちいさくて高い。大きな声を出そうと思うとふるえて少しみっともない。お店やさんで注文するときは1回では通らないから、友達や家族がオーダーしてくれる。でも電話口で「優しい声ですね」と褒められることもあるし、大きい音が苦手だから別…

旗を振る

大学3年の夏、現職のインターンに参加した。意識が高かったわけではない。ゼミの教授が「楽したいひとは早めに行動しときなさい。」と言ったから、面倒くさがりのわたしはその通りに行動しただけだった。30人の応募者の中から、1人選ばれて、メーカーで2週…

タイ!

わたしたちの旅行は大体、半年くらい前に「どっか行こう〜」で始まる。そしてしばしの休息。ギリギリの時期に焦って「どこ行こう、島!」の連絡を取り合ってからはお手の物、行き先はタイ。夏に川で遊んだので、次は海と決めていた。 わたしたちの出会いは小…

塩素

毎晩あなたが健やかに生きられますようにと目を閉じる。守らなければいけない倫理観、周囲の視線、自分の理想。何もかも捨てて旅に出てしまおうか、なんて思いつつ 毎日同じ時間に起きて、同じ電車に乗って働いているのは、この街で生きるため。 東京で一人…

コップの水滴

すごく苦手なのに、嫌いになりきれないのはどこかで期待しているから。好きになりたいから。 中学2年生のとき、突然学年で一番不良の男の子からメールが来た。うちのクラスの少し皆から嫌われている女の子の彼氏だった。あいつと仲良くしてほしい、みたいな…

鍵盤のうえでスキップ

周りがどんどん付き合っていって、なんなら結婚して、子供までいるという現実。そうよね、もう23だもの。かく言うわたしは、「愛とは?恋とは?」という、皆さんがティーンの頃に悩んでいただろう命題をひたすら解こうともがいている。 わたしの考える愛は、…

助けたい、包みたい

頭のなかではまっすぐズンズン歩いていって、その勢いで抱きしめているのに、実際のわたしの身体は何でもないふりをしてあなたの隣に並んで、他愛のないはなしをしていたりする。 触れる、という行為は、言葉が役に立たない場面での一種の祈り。大切だよ、と…