黄金色のステッチ

 

けれどもそれは何のためなの?どうせ生理がきたら汚れちゃうじゃん。洗濯したらボロボロになるし。コスパ悪くない?あたしは今日UNIQLOだよ〜!左の眉毛をクエスチョンマークのように、くいっと上げて彼女は言った。わたしの発言ひとつで変わる表情は、純粋で美しい魂の写し鏡。

 

最近ね、海外のブランドの下着を買うようにしたの。好きな人はいないし、友だちとの旅行の予定もないんだけれど。

 

理由は特にないのだけれど、強いて言うならずっとコンプレックだったパーツに、居場所を作ってあげたくなったのかもしれない。不可侵で、誰からも評価されない、気づかれもしないひとりだけのお城。一切の生活感から断絶された、美術館の展示のように完璧に作られた空間。普段のなさけないくらい甘くて隙だらけな姿とは全く別の、さながら気ままな猫みたいなフランス映画の主人公のような性格。

 

秘すれば花!と言うわたしに、彼女はなんだそれとケタケタ笑った。両眉と目尻が下がって、それがとても愛らしくて、生活感の愛のイデアみたいだと思った。あなたのような魂に近づけたら、お城にみんなを招待しよう。それまでは、わたしだけ。

 

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