言葉と自意識について

電子書籍はどうも肌に合わない。無料お試ししていたkindle unlimitedを一日で解約してしまった。短い時間の中で、和辻哲郎の言葉と出会う。『自己の肯定と否定と』。

“自分が人を欲する時には人を征服して自分に隷属せしめる。自分の愛は、常に、自分を完成する要素としての人間に向う。自分は淋しさや頼りなさを追い払うために友情を求めたりなんぞはしない。友人の群を心持ちの上の後援として人と争ったりなんぞはしない。自分はただ独りだ。ただ独りでいいのだ。”

“個性を完成することはわれわれの生活の内にひそむ目的である。個性が完成せらるる度の強ければ強いほどそれは特殊の色彩を強めるのであるけれども、同時にまた人性の進化に参与する所も深くなる。特殊の極限はやがて普通となるのである。”

いわゆる文化とカテゴライズされる文学・芸術・スポーツに共通するのは、その長い歴史を振り返った時、自分の感性や考え方に近いものが見つかることだ。こんなこと考えているのは自分だけだという自意識は、あっさりと終了する。でも同時に、同士を見つけたような、この世界に自分の理解者がいるんだというような安心感を得ることが出来る。

行き過ぎた個性は結局人間としての根本、普遍に行き着くらしい。思ったことや感じたことも、スマートフォンを触っているうちに忘れてしまったりする現代だから、自意識も個性もしっかり言葉として残していこう。